『Calligraphie
Kunpei KAWACHI』at BELGIUM 2012を白帝社から発行し、献本を送らせて頂いたところ、早速御礼の返信が十数通届いた。その中からS先生からお手紙を紹介させて頂く(/は改行)。
金木犀の小さな花の香が漂ってまいりました。貴重な作品集を手にいたしました。ありがとうございます。河内先生が辛い想いの頃、私も人生の師をなくしました。林英一先生です。昨年7月のことです。御年91才。/先生のご意志で野辺の送りもままならずどんなに悲しく辛かったか…。それにしても先生らしい「いさぎよさ」がそこにあった感がいたします。/いつも慎ましやかで質素なくらしをされていました。その中に品格があり人格者であられました。/私にとって教科書そのものでした。奥さまもその一年前に亡くなられ桐ヶ丘にはもうどなたもおられないようです。/その後の私は、風や太陽や子どもたちの声に助けられこうして元気でおります。10月6日生れの私には河内先生のプレゼントがどんなに嬉しかったことでしょう。そして先生にお知らせするきっかけをきっと天の林先生がお知らせくださったのでしょう。「もう河内先生に知らせてもいいですよ」って…。/先生のご活躍に嬉しい私がこのような文章で綴っていることをお許しください。/ご家族の皆々様によろしく/そして奥様にくれぐれも…/奥さまのくださった「ひねもす遊べ幼な子よ」のモットーを失わぬよう私も頑張ってまいりたいと思います。
追伸:保育園の園児のおじいちゃんで、教師であられた方より、たまたま目にした書物の中に林先生のお名前を最後のページ(序文の)で見つけられ、コピーをいただきましたので先生にも送らせていただきます。/たった一行の文章の中に先生の存在がずっしりと重く伝わってきました。
そのコピーの文章を引用させて頂く。
最後に、だが最少にではなく、私は東京赤羽に「地の塩」として生活される日之基保育園園長の林英一先生に感謝しなければならない。先生は過ぎし日、私が自らの愚かさの故に招いた人生に危機に際して、もっとも格調高い近代市民的な仕方で私を救けられたし、現在もなお救けられつつある。――肥前栄一著『ドイツ経済政策史序説』未来社1973年12月31日発行より
林英一園長は、「品格があり人格者であられました」、「もっとも格調高い近代市民的な仕方で私を救けられた」とある通りのお方であった。なぜか私のことを認めて下さり、園児との父として接するのみならず、保育とは何か、人として如何に生きるかの「格の違い」「プライドの持ち方」をお教え下さったと思っている。