ある雑誌用に書いた村上翠亭先生個展の紹介文を転載する。
「翠亭の書」展実行委員会委員長・大東文化大学教授/河内利治(君平)
【翠亭の書〜村上翠亭個展〜】元筑波大学教授・元大東文化大学教授、村上翠亭先生の初の個展が開催されます。会場:東京美術倶楽部2F・3F、会期:2013年11月30日(土)〜12月2日(月)、時間:10時〜17時(最終日16時まで)。
ご承知のとおり村上翠亭先生は、将来を嘱望されながら昭和47年に書壇を離れ、己の信念のもと、書作活動、日本書道史研究、後進の指導にと邁進されてきた書家です。書壇時代から一貫して、作家としての「書」、教えるための「書」のありようを全力で模索し、今なお「書とは何か」、「書はどうあるべきか」を自らに問いかけて制作を続けておられます。
昭和28年から現在までの、純粋典雅の古筆、挑戦躍動の大字、日日自在の書跡(パネル・屏風30点/冊子・帖100点)が華麗な料紙と多彩な装丁によって眼前に展開されます。「かなのレッスン」原本、豆冊子なども併せて展示することで、書家翠亭の生きざまと書業を多くの方々に知って頂けるのではないかという思いで本展を企画致しました。
実は一昨年、教え子の有志が集い、作品集『翠亭』芸術新聞社を刊行致しました。編集過程で、作品集だけで終わらせて良いものかと提案致しましたが、先生は「生前の遺墨展かぁ」、「恥かくなぁ」と固辞されました。そこで童謡唱歌、古典文学の一節、思い浮かんだ言葉のあれこれを揮毫された700点を超えるお手製小冊子等の膨大な作品群を一点一点台帳に記載して整理し、ようやくしぶしぶのご承諾を頂いて今回の個展を開催する運びとなりました。
3日間という短い会期ですが、作家の生きざまとともに「日本的な書のありよう」、「書の原点」を見つめなおす書展として幅広い方々に展観されることを願っています。